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顛末記
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炭酸水の弾ける泡の音で目が覚めるような神経質なブラジル人に教わったタガログ語は全くのデタラメでした。運命の赤い糸を断ち切るためなら何だってやります。西東京のジムノペティことMACH5ベース担当アカホシです。



身に染みる侘しさが北風に吹かれてきしむ夜にでさえ幾ばくかの小銭があればそれを購う事も出来ようが、それすらも月に隠れてしまったこんな夜にはたどる道すら覚束ない。


そんな日には近所のコンビニに行く。


ここにはごくごく普通の、


いや、中の下程度のスペックの店員なんだけど、才能なんてゆうちっぽけな物ではないものを持つ男がいる。


ほんの少しアトピー気味の白い肌に映える黒縁メガネ。キューティクルの欠けた黒髪の下に引っ付いた彼の名は

「万力」


工作室などに置いてある木材などを挟む用具と全く同じ名前、ただその一事である。


万力が「いらっしゃいませ」と言い、万力が品出しをして、万力がレジに向かい万力がトングで肉まんを挟みあまつさえソレを取り落とす。


万力なのに。


彼が何かをするたびに字面が俺の脳裏で踊り心が弾む。


月はまだ出ないがだいぶ気分は晴れてきた。



もう少し歩こう。
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